イベントの内容
「シシと生きる。 ? 地域文化の継承と創造 ?」
富川岳『シシになる。──遠野異界探訪記』(亜紀書房)刊行記念
特別ゲスト:コムアイ
日時:2025年8月8日(金)19:00~(開場18:30)
場所:SENDAI KOFFEE(〒980-0821 宮城県仙台市青葉区春日町4丁目25 パストラルハイム春日町)
定員:45名
参加費:2,500円(大学生以下2,000円)+ワンドリンク
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何も知らずに東京から移り住んだ岩手県遠野市。『遠野物語』の世界で出会ったのは、“シシ”になる人々だった。岩手・宮城を中心に継承されてきた郷土芸能「シシ踊り(鹿踊・獅子踊」。ひょんなことからその踊り手となり、自らその土地で”シシ”として生きる作家・プロデューサーの富川岳が書き下ろした渾身のノンフィクションが6月23日に出版された。
本の中心で描かれている、シシ踊りとアーティストが共創して新たな祭礼の場を誕生させたライブイベント「遠野巡灯篭木」。本イベントでは、岩手県遠野市で始まったこの取り組みに初回からアーティストとして参加し、やがて「張山しし踊り」で太刀振り役となって、見事な踊りを披露したコムアイをゲストに迎える。
長年、その土地で続いてきた郷土芸能に外から加わった二人が考える、「継承」とは何か。創造の狭間で生きる葛藤、その喜びとは。人はなぜ今も獣を被って踊るのか、シシになる必要があるのか。自分たちは一体何を取り戻そうとしているのか──。聞き手は、同書の解題と用語解説を担当した桜井祐が務める。
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<登壇者>
富川岳
シシ/作家。1987年、新潟県長岡市生まれ。岩手県遠野市在住。都内の広告会社にプロデューサーとして勤務した後、2016年に岩手県遠野市へ移住。恩師との出会いをきっかけに『遠野物語』に戦慄して以来、民俗学をベースとした様々な創作活動や文化振興を行う。2018年から張山しし踊り(遠野郷早池峰しし踊り張山保存会)に所属。郷土芸能「シシ踊り」に傾倒する日々を送る。2023年『本当にはじめての遠野物語』(遠野出版)、2024年『異界と共に生きる』(生活綴方出版部)、2025年6月『シシになる。──遠野異界探訪記』(亜紀書房)。株式会社富川屋代表、遠野市観光協会理事。遠野文化友の会副会長。
https://www.instagram.com/gaku.tomikawa/コムアイ
アーティスト・歌手。 存在することが仕事。 声を中心に、音楽、パフォーマンス、執筆、インスタレーション制作、アートイベント主催、演技、トーク、ナレーションなど、分野をどんどん横断して活動する。浮遊感があり幻か現実かわからない表現や、意味性と無意味性を行き来することを得意とする。好奇心と社会意識が高く、ユーモラスで多様なキャラクターを入れ替え表現に落とし込むことに面白みを感じている。 日本の郷土芸能や民俗学、インドの古典声楽に影響を受けており、現在は底抜けに明るいブラジルのバイーア州で黒人奴隷たちの逞しい足跡をなぞりながら、日本国内でも活動を続けている。 2025年6月に食品まつりa.k.a foodmanと『FANI MANI』をリリース。 その他の作品に、屋久島からインスピレーションを得てオオルタイチと制作したアルバム『YAKUSHIMA TREASURE』、奈良県明日香村の石舞台古墳で行ったパフォーマンス『石室古墳に巣ごもる夢』、東京都現代美術館でのクリスチャン・マークレーのグラフィック・スコア『No!』を演奏したソロパフォーマンスなど。 インスタレーション作品では、パフォーマンスではかなわない”体験を繰り返し生む”装置を制作している。「IRON CALLING」「Talk To Yourself」「切れても切れても、結ぶことを」いずれもアーティストコレクティブSIDE COREとの協働かキュレーションによるもの。 社会課題をアートとユーモアでマッサージするアーティビズム・コレクティブ『HYPE FREE WATER』としても村田実莉と共に活発に活動し、架空の通貨のみが使える演劇型アートイベント「おかしなおかね」を定期的に開催する。 俳優としての活動は、NHK『雨の日』(主演)、Netflix『Followers』、映画『福田村事件』など。 音楽ユニット・水曜日のカンパネラを2021年に脱退。 2023年にペルーアマゾンで第一子を出産。先住民の方々との生活で受け取ったものを形にすべく著作を出版予定。
桜井祐
九州産業大学芸術学部准教授、TISSUE Inc. 共同設立者/編集者。1983年、兵庫県生まれ。2008年、大阪外国語大学大学院言語文化研究科修士課程修了。「媒介的実践としての編集的知」をテーマに、学際研究プロジェクトの実施やアートプロジェクトのキュレーション、アーティスト作品の企画・編集ディレクションなどを行う。2017年、クリエイティブディレクションを中心に行うTISSUE Inc./出版レーベルTISSUE PAPERSを設立。共著書に『新世代エディターズファイル 越境する編集』(BNN、2021年)など。
https://www.instagram.com/yuacme/----
富川岳『シシになる。──遠野異界探訪記』(亜紀書房)
東京の広告会社で働いていた著者が、河童やザシキワラシをはじめ妖怪、精霊、神々など…この世ならざる気配に満ちた遠野に導かれるように移住し、いつの間にか400年続く郷土芸能「シシ踊り」の踊り手となって、人から”シシ(獅子)”へとトランスフォームしていく激動のプロセスを描いたノンフィクション。
岡本太郎も目にし、民俗学者・柳田国男を戦慄させた「シシ踊り」。牛の角、龍の鼻、鹿の目を持つ霊獣シシ。人はなぜ獣を被って今も踊り続けるのか、また踊り続けなくてはならないのか。デジタル偏重時代の今、僕は一体何を取り戻そうとしているのか──。その問いはやがて、民俗学の夜明けを告げた歴史的名著『遠野物語』の最終話に秘められた謎をも解き明かしていく。
いつしか周囲に生まれる、奇跡のような出会いと物語??民俗学をベースとした様々な創作活動や文化振興を行い、いま各界から注目を集める若きプロデューサーが10年にわたるリサーチと実践、そして研究者との協業をもとに熱量を込めて書き下ろした、渾身の商業出版デビュー作。この本を読まずして遠野は語れない。民俗学の聖地に新時代をもたらす物語がいま始まろうとしている。
[解題&用語解説]桜井祐(九州産業大学准教授)
[造本設計]吉岡秀典(セプテンバーカウボーイ)
[推薦]森田真生(独立研究者)&ドミニク・チェン(情報学研究者)
[巻末漫画]五十嵐大介(『海獣の子供』『リトル・フォレスト』)